キーヨの冒険(原作:お友達/絵:私)[1章:曵き船キーヨ(8/9,09)]

1.子供達が甲板で遊んでる。「かくれんぼしよう。」
2.曵き船キーヨが言う。「おいおい、元気に俺の甲板で遊んで、あんまり俺をゆすらないでくれ。
俺はもう年寄りなんだから。」
3.キーヨが言う。「昔は元気でいろんな事をし、信仰も強かったよな。信仰なしでは海ではあんなこんな事は出来なかったや。」

1.30年前のキーヨ。若かった頃に逆上る。「ぼくの聖書箇所で一番好きな箇所は
イザヤ書の40章30から31節の、『年若い者も弱り、かつ疲れ、壮年の者も疲れ果てて倒れる。
しかし主を待ち望む者は新たな力を得、わしのように翼をはって、のぼることができる。』なんだ。」
2.キーヨが言う。
「海では風を利用しないとうまく航海出来ないんだ。よく祈らないと風も良い方向に向かないんだ。神様には何度も感謝したよ。」
3.「しかし今日は波も穏やか。10歳の男の子のまーくんに運転をまかすか。」

1.「まーくん何しに行くか解ってるね。」まーくんが言う。「座礁した船を曵く仕事なんて簡単だよ。」
2.キーヨが言う。「まーくん。無理になったら運転しなくてもいいよ。仕事ってもんは簡単でないのが普通なんだよ。」
3.「さあ仕事に出発だ。今回はいねむり運転で座礁してしまった者を助けにいくんだったな。」

1.キーヨ、出発前に祈る。「主よ。今日の仕事をお守り下さい。荒波にもまれても生き延びて来れた日もありました。
荒波は苦手ですが、神は訓練される神とあります。前よりも海で強くなれたのも神様あなたのおかげです。
さらに、よき曵き船として下さい。」
2.「とび魚が飛んでいる。エンジン全開だ。ディーゼルエンジンの力強い振動がぼくの体に伝わって、
心も体も浮き立って来るよ。今日は穏やかな海だが、へさきが上下するにつれ、波が甲板を洗い、
決して速い船ではないけれどスピード感がましてくる。最高、汽笛でも鳴らしたい気分だ。」
3.「まーくん、道は解ってるね。造船所の近くをまず、通るんだよ。」

1.運搬船一隻が座礁している。
2.「おーい、キーヨ、来てくれたか、待ってたぞー。」
そしてキーヨが答える。「途中、この近くは浅すぎて通れるかどうか、大変で危なかったぞ。」
3. 座礁した船にはもう一隻の船が先に来てその2隻の船の間にはロープが張り渡され、
船に積んだ魚(トロ箱)が伝いに渡されてる。「朝から重しを取るためにずっと運んでんだ。」

1. 座礁した船がすまなそうに言った。「いねむりしちゃって、気づいたら目の前に岩があって、
あわててかじをとったら、乗り上げてしまったんだ。」
2.「台船、ハシケ、起重機船いろんな物、曵張ったが今回もいつものようにロープはって曵かないと。
一仕事前にまず祈らないと。主よこの仕事が成功しますように。よし、さあ一仕事だ。」
ぼくはゆっくりと後ろに戻り再びロープで互いを固定した。そしてロープを張った。
3.もう一つの運搬船が言った。「キーヨ、先にアンカーを打って、岸にぶつからないようにしたらどうだい。」
「いい案だ。」

1.キーヨは座礁した船に聞いた。「スクリューはまわせるかい。」
「ああ、さっきやってみた、短い時間ならスクリューを回せると思うよ。ありがとう。」
「まだ座礁した岩から下りてもいないのにありがとうはまだ早いよ。」
2.ぼくは、少しづつエンジンの回転を上げていった。
船長が言った。「機関長エンジン出力4分の1お願いします。」「了解エンジン出力4分の1とします。」
船長が言った。「機関長エンジン出力2分の1お願いします。」「了解エンジン出力2分の1とします。」
船長が言った。「機関長エンジン出力4分の3お願いします。」「了解エンジン出力4分の3とします。」
3. 座礁した運搬船はビクリとも動かなかった。

1.すると、沖のもう一隻の運搬船から「船をゆすってみろ」と声がかかった。
2.そして、「おおいスクリューを回せ。」と言った。座礁した運搬船のスクリューが回り、
海水が勢い良く船と岩の間を駆け抜けたとたん、座礁した船はずるっと動き始め、
スピードを増しながらあっという間に滑り落ち始めた。「キーヨ、やったぞ、座礁した岩から抜け出したぞ。」
3. しかし、「しまった、問題がおこった。」キーヨが言った。「ぼくのアンカーが岩礁に絡まり動きが取れなくなった。」

1. 「キーヨ、何やってんだ、おろした船に曵いてもらえ!」
2. キーヨが言った。「すみません。お願いします。かっこ悪いったらありゃしない。」
3.「アンカー立ちましたー。やっとこれで海底とも縁が切れ自由になった。」キーヨが言う。

1. そして、座礁した運搬船の「ありがとう。」の汽笛とともに、一時の問題も終わり、互いに帽子を振って別れを告げた。
2. 「私は、鼻高々だ。深い満足と心地よい疲れが私をおおっている。神様、今日の仕事に感謝します。」おしまい。
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